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紙の向こう
AI008第2講義
00:07

学術論文をただ読み流すだけでは、本格的な工学的熟達に到達できません。変換器(Transformer)の数学的基盤に深く入り込む必要があります。理論的理解から実装への移行こそが、高次元の潜在空間における「本質的な曖昧さ」を解明する唯一の方法です。

1. スケーリングの数学的根拠

現代の言語モデルの核心となるメカニズムはスケーリングされたドット積アテンションです。理論ではしばしば見過ごされがちな重要な工学的ポイントはスケーリングルールです:

  • 原始的なアテンションスコアは、キーの次元サイズの平方根で割る必要があります(dk
  • なぜかというと:これにより、ドット積が極端に大きくなることを防ぎます。そうしないと、ソフトマックス関数が無限小の勾配領域に押し込まれ、逆伝播中におけるモデルの学習能力を効果的に「殺してしまう」ことになります。

2. 理論からテンソル演算へ

工学的理解とは、概念的なループから高度に並列化された行列乗算へと移行することです。

  • 順序情報の注入:RNNとは異なり、変換器は順序の概念を持ちません。エンジニアは、正弦および余弦関数(位置符号化)を手動で記述して、順序情報を組み込む必要があります。
  • 安定性機構:実装には、戦略的に残差接続レイヤー正規化(LayerNorm)内部共変量シフトに対抗し、訓練プロセスが安定したまま保つために必要です。
工学的洞察力
完全な熟達は「一行一行」の実装によって得られます。学術文献に頼るだけでは、勾配の安定性や計算効率に関する誤解を生むことが多いのです。
Pythonによる実装(PyTorch)
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import torch
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import torch.nn as nn
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import math
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def scaled_dot_product_attention(query, key, value):
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# d_k(キーの次元)を計算
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d_k = query.size(-1)
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# 原始的なアテンションスコアを計算
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# 単純なループから行列乗算へ移行
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scores = torch.matmul(query, key.transpose(-2, -1))
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# スケーリングルールを適用して、無限小の勾配を防止
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scaled_scores = scores / math.sqrt(d_k)
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# ソフトマックスを適用してアテンション重みを得る
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attention_weights = torch.softmax(scaled_scores, dim=-1)
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# 出力は値の重み付き和です
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return torch.matmul(attention_weights, value)